掌編小説「おふくろの味 ① 母のぬか床」

あきつフルール

2017年08月07日 21:15

修善寺の花屋
「あきつフルール」の 秋津ゆきみ です。

いつもはなちゃんブログをお読みいただいて
ありがとうございます。

今日は、フローリスト作家 秋津はな の
掌編小説「母のぬか床」です。

お時間ありましたら お読みくださいね。
短いお話です。



「亜紀ちゃ~ん、遊びに行く前に天やま 作っといてね。
 それと、ぬか床 かき混ぜておいて~」
母の声がした。

両親は 和食処のお店をやっていた。

手伝いをするのは、当たり前の日課だった。
高校時代の日曜日の朝だ。

(ゲッ! 大根おろして、生姜おろして~、
  ぬかみそに手を突っ込むわけね~)
※ 天やま は大根おろしの上におろししょうがを乗せて山のような形にしたもので、
 天つゆの中に入れるもののことです。

「はーい」
チョッと嫌だけど元気よく返事をした。

ぬか床は苦手だけど ぬか漬けは大好物だ。
特に夏のミョウガの漬物がたまらなく好きだ。

ぬか床は、調理場の奥の冷暗所にあって、手前の大きい甕には、
キュウリ・ナス・人参・大根 そして半分に割ってあるミョウガが
ゴロゴロと入っていた。

「ママ―、みんな 漬かってるよ~。 全部出しとくね~」

周りについたぬかみそを手でこいてボールに入れて、
大好きなミョウガだけを洗って、切らずにそのまま口に入れた。
(う~ん、この癖のある香り、大人の味だ~)

母が来た。
「亜紀ちゃん、ミョウガを食べすぎると物忘れするって知ってる?」
と 優しい笑顔で 諭すように言った。


2017年 土用丑の日
目の前のうな重に添えられた「香物」を
箸でつまんでみた。

向こうが透けて見えそうなほどの出来合いのさくら漬けとキュウリの浅漬けだ。


母の手作りの愛情いっぱいのぬか床が妙に恋しくなった。

四季折々の香物~おふくろの味だ。


そういえば、食通の時代小説作家の本に確かあったような。

( 年の入った香の物で酒を飲みながら
   鰻が焼きあがるのを待つのが、良い)  
                               完
   




最後までお読みいただきまして ありがとうございました。

花や あきつフルール
(オンラインショッピングができます。)
http://izu-hanaya.jp
「お花相談室」でお花に関するお悩み相談を承っておおります。


FBページは 「花や あきつフルール」
(毎日更新しています  フォローしていただけると嬉しいです)
https://www.facebook.com/izu.hanaya/?fref=ts

FB  「秋津ゆきみ」
(友達申請していただけると 嬉しいです)
https://www.facebook.com/yukiml.akitsu









関連記事