掌編小説 「秘めやかなブルースター」(前編) by 秋津はな

あきつフルール

2017年09月06日 20:42

修善寺の花屋
「あきつフルール」の秋津ゆきみ です。

いつもはなちゃんブログをお読みいただきまして
ありがとうございます。

フリーペーパー「あかねマガジン」に掲載した
掌編小説をご紹介します。
お時間ありましたら、読んでみてくださいね。


~~秘めやかな ブルースター~~(前編)




「くるみ ごめんな」
そんなメモと一緒に送られた招待状。

2ヶ月後、
6月の 雨とは無縁の青い空の土曜日。

《成田圭介&杏子 ウエディングパーティ》
宴もたけなわだ。

隣席の美登里が取り分けられたキッシュで
口をいっぱいにしていた。
「ったく~、圭介の横はさ、てっきり くるみだと思っていたんだから。
まさか、新入社員の杏子ちゃんとはねー。」
「止めて、美登里。もうとっくに終わったことなんだから。」
そうひと言って、その後の言葉は出なかった。

中堅の証券会社の同期研修で圭介と出会い、いつか知らないうちに付き合うようになった。
横浜と静岡、勤務地が違ったため、
二人の付き合いは、周りにしれることがなく、6年。
たった一人 知っていたのが大学から一緒の美登里 だった。

「ねえねえ、この青いお花、なんて言うの?ドレスも綺麗なブルーだね。」
会場全体がブルーと白で統一され、二人の後ろのバルーンも
真空色のドレスも、杏子の明るさと若さと美しさを
より一層引き立てていた。
「ブルースターっていうお花。サムシングブルーっていって、
花嫁さんは何かブルーの物を身に付けると幸せになれるっていう 言い伝えがあるのよ。」
「だから、くるみ 私の結婚祝にブルーの小物をくれたんだね。」
「イエース!」
あまり多くの言葉を話したくはなかったし、言葉を選ぶのも辛かった。
でも、無口でいるのは、一人暗い気持ちになりそうで、もっと嫌だった。

2年前。
「北海道に転勤になった。2年で帰ってくるけど、くるみ・・・一緒に来てくれない?」
それは、圭介からのプロポーズだった。

なのに~
「2年だったら、もうちょっと仕事して、それからでもいい?あっという間だよね、2年なんて~」」
くるみは、即答してしまった。
圭介と結婚することは間違いない。
でも 今でなくてもいい。2年後でいい。

二人は距離だけでなく、心も離れていった、少しずつ・・・。
毎日の飽きるほどのLINEは、1日に1度になり、
圭介の声を聞かない日が段々増え、
お互い何をして過ごしているのか、
何を考えているのか、全く分からなくなった。

「覆水盆に返らず」一言呟いた。正面の少し高い遠い圭介を見た。
あの頃と変わらない圭介を、今も好きな くるみがそこにいた。

                              (つづく)




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